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有機劣化解析

樹脂・ゴム・フィルム・成形品などの有機材料は、熱、紫外線、酸素、水分、繰り返し使用といった外部環境の影響により、時間とともに性能が変化します。外観上はまだ大きな異常が見えなくても、内部では添加剤の消耗、分子量低下、官能基変化、結晶性や熱特性の変化が進行している場合があります。
クリアライズでは、これらの変化を単一の手法だけで判断するのではなく、添加剤分析、構造解析、熱分析、表面観察を組み合わせた多角的な有機劣化解析により、劣化の原因特定、寿命評価、材料選定、品質改善を支援しています。

 

 
 

有機劣化解析とは

有機劣化解析とは、樹脂やゴムなどの高分子材料が、どのような環境要因によって、どのような化学的・物理的変化を受けたのかを明らかにする解析です。たとえば「割れた」「脆くなった」「黄変した」「においが変わった」「熱に弱くなった」といった現象の背後には、酸化防止剤や光安定剤の減少、ポリマー骨格の切断、酸化由来官能基の生成、結晶構造や融点の変化などが関係していることがあります。有機劣化解析は、こうした現象を感覚的に捉えるのではなく、分析データに基づいて説明可能にするための技術です。
特に近年は、材料の長寿命化、製品信頼性の向上、サーキュラーエコノミーへの対応、マテリアルリサイクル促進の観点から、劣化を正しく捉えることの重要性が高まっています。樹脂材料は用途に応じてさまざまな添加剤を含む複合材料でもあるため、単に「樹脂が変質したか」だけでなく、「添加剤がどの程度残っているか」「安定剤がどのように機能したか」まで把握することが、品質保証や再利用判断の精度を高めます。

〇 このようなお悩みに対応します
製品や材料のトラブルでは、「なぜ劣化したのか」が分からないまま対策が曖昧になるケースが少なくありません。有機劣化解析は、たとえば耐久試験後に性能が落ちた理由を知りたい、熱処理やUV照射の影響を比較したい、配合した添加剤が十分に機能しているか確認したい、標準グレードと耐熱・耐候グレードの差を定量的に見たい、リサイクル材の品質を評価したいといったニーズに適しています。
また、劣化はひとつの要因だけで進むとは限りません。熱履歴、紫外線、酸素、水分、応力、添加剤消耗などが複合的に影響するため、「まず何を測ればよいのか分からない」というご相談も多くあります。クリアライズでは、分析したい内容や試料状態に応じて、最適な分析フローを提案できる点も強みのひとつです。

〇 樹脂・ゴムなどの有機材料はなぜ劣化するのか
有機材料の劣化原因として代表的なのは、熱劣化、紫外線劣化、酸化劣化です。熱履歴を受けると、酸化防止剤などの安定剤が徐々に消耗し、樹脂本体の酸化や分子鎖切断が進みやすくなります。紫外線に曝される環境では、光エネルギーによってラジカル反応が進み、表面からひび割れや変色が現れることがあります。これらの変化は外観に表れる前から進行している場合があり、初期段階では分子量低下や融点変化、添加剤減少が先行することもあります。
さらに、実際の材料は単一ポリマーではなく、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、難燃剤など、複数の添加剤を含む配合系であることが一般的です。そのため、劣化挙動を理解するには、ベースポリマーの変化だけでなく、添加剤の残存量や消耗挙動をあわせて見る必要があります。マテリアルリサイクルの場面でも、この視点は重要であり、劣化状態の見極めが再利用性や品質安定性の判断につながります。

有機劣化解析で分かること

有機劣化解析では、まず添加剤がどの程度残っているかを確認できます。酸化防止剤や紫外線吸収剤、光安定剤などは、材料の劣化を抑える重要な役割を担っていますが、使用環境や熱履歴により徐々に減少します。添加剤残存量を把握することで、保護機能がどこまで維持されているか、劣化がどの段階にあるかを判断しやすくなります。
次に、樹脂本体にどのような化学変化が起きているかを評価できます。FT-IRでは酸化由来官能基の生成やポリマー骨格の変化、NMRでは分子構造や成分差、TG-DTAやDSCでは融点や熱挙動の変化を確認できます。これらを組み合わせることで、「表面に割れが出た」という現象を、官能基変化、構造変化、熱特性変化という異なる視点から裏づけることができます。
さらに、どの条件で劣化が加速するかの比較も可能です。温度条件、処理時間、照射時間、グレード差、未処理品との比較などを通じて、材料選定や工程条件の最適化に必要な知見を得られます。
〇 熱劣化の評価でできること
熱履歴を受ける樹脂や配合材料では、加工条件、使用温度、長時間暴露によって添加剤が減少し、酸化や脆化が進む場合があります。有機劣化解析では、熱処理温度や処理時間を変えた比較、未処理品との比較、グレード差比較を通じて、どの条件で材料が劣化しやすくなるかを把握できます。これは、成形条件の最適化、耐熱グレード選定、工程内品質管理に有用です。
実際に、熱処理による添加剤および樹脂の劣化評価試験では、熱処理温度が高いほど、また時間が長いほど酸化防止剤残存量が減少する傾向が示されています。さらに、FT-IRや固体NMRによって、官能基変化や構造変化を評価することで、単に「添加剤が減った」だけでなく、「その結果として樹脂がどのように変質しているか」まで踏み込んで把握できます。
下記事例では、熱処理による官能基の減少に加え、官能基の性質が変化していることが分かりました。





熱処理時間依存性 官能基/構造変化分析評価事例
〇 紫外線劣化の評価でできること
屋外使用部材や照明近傍で使用される部材、長期暴露されるフィルム・樹脂成形品では、紫外線劣化が大きな課題になります。紫外線劣化では、表面から劣化が進むことが多く、初期にはひび割れが見えにくくても、内部では分子量低下、熱特性変化、添加剤消耗が進行していることがあります。そのため、顕微鏡、FT-IR、NMR、TG-DTA、LC/MSなどを組み合わせた多角的評価が有効です。
PP樹脂に紫外線劣化を与えた結果、標準グレードのほうが耐候グレードよりひび割れ進行が速く、また熱特性や官能基変化、添加剤減少の傾向にも差が見られることが示されています。こうした解析は、耐候処方の最適化、材料切り替えの妥当性評価、屋外耐久性の事前検証に役立ちます。

クリアライズの有機劣化解析アプローチ≪分析評価方法とその事例≫

クリアライズの受託分析サービスは、化学分析、物性評価、構造分析、機械試験などを横断的に活用できる点が特徴です。有機劣化解析でも、単一データから結論を急ぐのではなく、複数の分析手法を組み合わせて劣化の全体像を把握するアプローチが有効です。
こうした多角的評価は、劣化現象を「見た目」だけでなく「化学」「構造」「熱」「配合」の視点から説明することにつながります。
〇 LC/MS による添加剤分析
LC/MSは、酸化防止剤や光安定剤などの添加剤を定性・定量評価するうえで有効な手法です。樹脂や配合材料の劣化では、まず安定剤が犠牲的に消耗し、その後に樹脂本体の酸化や分子構造変化が進むことがあります。そのため、添加剤残存量の把握は、劣化の初期段階を見極める重要な指標になります。
LC/MSは「添加剤が入っているか」だけでなく、「どの条件で、どの程度減っているか」を比較できる点が大きな価値です。
下記の事例では、酸化防止剤は、劣化初期から減少しており、樹脂の酸化を抑制するために犠牲的な働きを示していることが分かります。また、標準グレードと耐候グレードを比較すると、耐候グレードの減少量はゆっくりと進んでいることもわかります。

添加剤の減少量分析LCMS
LC/MSによる添加剤減少量分析事例

〇 FT-IR による官能基変化の評価
FT-IRは、赤外吸収スペクトルから物質の化学構造や官能基変化を推定する代表的な分析手法であり、有機材料の劣化解析において非常に重要です。酸化が進んだ材料では、カルボニル基など酸化由来の官能基が現れることがあり、ポリマー骨格や添加剤由来成分の変化もあわせて評価できます。外観変化がまだ限定的な段階でも、FT-IRで化学的な兆候を捉えられることがあります。
紫外線劣化評価では、PP樹脂において、酸化由来官能基は時間経過後に見え始める一方で、分子量低下や融点変化はより早い段階で進行することが示唆されています。これは、劣化解析においてFT-IR単独ではなく、ほかの分析法と組み合わせる重要性を示しています。つまり、FT-IRは「化学的に何が起きているか」を捉える中核手法でありつつ、他手法と統合することで解釈精度が高まります。
下記の実施例では、標準グレードと耐候グレードで紫外線を照射し酸化由来の官能基の状況をとらえています。耐候グレードは標準グレードと比較して酸化由来の官能基が遅れて見えることが分かります。

官能基分析FTIR
FT-IRによる官能基分析事例

〇 NMR による構造解析
NMRは、有機・無機化合物の構造解析や分子運動の把握に有効な手法であり、クリアライズでは高分解能NMRに加え、固体NMRにも対応しています。高分子材料の劣化では、ベースポリマーの成分差や構造変化が性能差や耐久性差につながることがあるため、材料の本質的な違いを捉えるうえでNMRは重要です。
下記の図では、13C NMRにより、標準グレードと耐候グレード(耐紫外線)の構造差を推定しています。耐候グレード側ではPEを含むと推定される一方、EPDM由来ピークの有無など、組成・構造に関する示唆が示されています。このようにNMRは、劣化による変化を見るだけでなく、そもそもの材料設計差やグレード差を理解する手がかりにもなります。
ベースポリマー分析FTIRNMR
標準グレードと耐候グレード(耐紫外線)のベースポリマー比較分析事例

〇 TG-DTA・DSC による熱挙動評価
TG-DTAやDSCは、材料の熱挙動を評価する代表的な手法です。融点、熱分解挙動、吸放熱挙動、結晶化挙動などを把握することで、材料がどの段階で性質変化を起こしているかを追跡できます。外観に異常が少ない段階でも、熱特性には変化が現れる場合があり、初期劣化の検知に有効です。
PP樹脂の紫外線劣化において、融点低下が初期段階から現れること、長時間照射後にはピーク形状が崩れることが示されています。これは、見た目の変化だけでなく、熱的性質の変化を併せて見ることで、劣化進行をより早く、より定量的に捉えられることを示しています。熱分析は、材料設計、使用条件の見直し、耐久性評価にもつながる重要な手段です。
下記に示すようなデータから得られた分解開始温度をもとに、最適な成形条件(温度、時間など)を設定することが可能になります。


PC_ABS加熱重量変化測定 PC/ABSの加熱重量変化測定事例
〇 顕微鏡観察による表面劣化の可視化
有機材料の劣化は、最終的にひび割れ、白化、変色、表面荒れ、剥離といった形で現れることがあります。顕微鏡観察は、これらの外観変化を視覚的に確認し、劣化の進行状態を分かりやすく把握するために有効です。化学分析や熱分析と組み合わせることで、「見えている異常」と「内部で起きている変化」を対応づけやすくなります。
下記の光学顕微鏡増での比較では、耐候グレードに比べ、標準グレート背の方が一方向にひび割れが生じ、劣化が速いことが分かります。

表面劣化の可視化事例

〇 リサイクル材・再生材の品質評価にも有効です
サーキュラーエコノミーやマテリアルリサイクルの推進においては、単に再利用するだけではなく、再利用後に必要な性能を満たせるかを確認することが重要です。再生材では、元の使用履歴や熱履歴、紫外線暴露履歴、添加剤残存量のばらつきなどにより、品質が不均一になることがあります。有機劣化解析は、こうした再生材の状態把握や品質安定化にも役立ちます。
特に、添加剤がどの程度残っているか、ポリマー構造にどの程度変化があるか、熱特性が新品材とどの程度異なるかを多角的に見ることで、再利用可否判断や用途選定の精度が高まります。これは、単なる不良解析にとどまらず、設計・製造・再資源化をつなぐ評価技術としての価値を持ちます。
クリアライズでは、多角的な評価を展開しており、物性(強度)と化学構造変化との相関をとることで、リサイクルプラスチックの寿命予測や仕様限界の設定に役立っています。

PC_ABS熱劣化品引張試験
PC/ABSの熱劣化品の引張試験事例
PC_ABS熱劣化挙動化学構造解析
PC/ABSの熱劣化挙動化学構造解析事例

また、近年、プラスチックの酸化劣化や安定性を高感度に評価できる分析技術として、ケミルミネッセンス(化学発光)法が注目されています。材料から極めて微弱に発生する発光を測定することで、外観や通常の物性試験では捉えにくい初期劣化や酸化反応の進行度を把握できます。
クリアライズでは、ケミルミネッセンスを活用することで、再生原料の受け入れ評価、製造工程における品質管理、添加剤や安定剤の効果確認、製品の耐久性評価など、リサイクルプラスチックの信頼性向上に向けた幅広い検討をサポートさせていただきます。

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よくあるご質問≪FAQ≫

有機劣化解析では何が分かりますか?+

有機劣化解析では、添加剤残存量、官能基変化、分子構造変化、熱特性変化、表面劣化状態などを総合的に把握できます。これにより、劣化原因の特定、材料グレード差の比較、寿命低下要因の把握、リサイクル材の品質評価などに役立ちます。

添加剤が減っているか確認できますか?+

確認可能です。LC/MSを用いることで、酸化防止剤や光安定剤などの定性・定量評価ができ、処理条件や使用後試料との比較により残存量変化を把握できます。

未使用品との比較はできますか?+

はい、未使用品と劣化品の比較は非常に有効です。差分比較により、どの成分が減少したか、どの官能基が増えたか、熱特性がどう変わったかを整理しやすくなり、原因特定の精度向上につながります。

リサイクル材の品質評価にも使えますか?+

使えます。再生材の添加剤状態、構造変化、熱特性を把握することで、再利用可否判断や品質ばらつき評価、用途選定の検討に役立ちます。

どの分析手法を選べばよいか分かりません?+

分析手法が未確定でもご相談いただけます。試料状態や知りたい内容に応じて、LC/MS、FT-IR、NMR、TG-DTA、DSC、顕微鏡観察などから適切な組み合わせをご提案できます。

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